宅建士と司法書士のダブルライセンス

宅建士と司法書士のダブルライセンス

 

宅建士を取った後、司法書士をとってダブルライセンスを狙うのはどうだろう?


 

宅建を取得を皮切りに、司法書士など他の国家資格を目指す方もたくさんいます。

 

果たしてダブルライセンスをとって意味があるのか?勉強はスムーズにできるのか?など気になる方も多いと思います。

 

結論からいうと、難易度が桁違いなので難しいですが、宅建士+司法書士のダブルライセンスは不動産業界の業務の面からも相性は良いです。

 

この記事では宅建士と司法書士のダブルライセンスについて詳しく解説します。

 

司法書士とは

 

司法書士は登記のプロ!毎年15,000人が受験している難関国家資格です


 

不動産登記をはじめとした法務の専門家

宅建士資格を受験していたり、不動産業界で働いている人なら知っている人ならおわかりですよね?

 

司法書士は、不動産を中心とした登記という手続きのプロフェッショナルです。

 

宅建士の「権利関係」の勉強の際に「不動産の権利取得を第三者に対抗するためには登記が必要」という選択肢は必ず見たことがあると思います。

 

この不動産の権利取得を第三者に対抗するために必要となる登記の手続きを専門としているのが司法書士です。

 

不動産登記のイメージ

不動産登記とは、(誤解をおそれずに言えば)「不動産に名前を書く」という法律手続きです。

 

例えば、甲という土地があったら、その土地はいったい誰が、どういった原因でいつ取得したのかということを法務局で申請して記録してもらいます。

 

そして、法務局で登記がされれば、権利を奪われるということはなくなるという仕組みが不動産登記です。

 

不動産という高額な財産について、権利保全を決してミスなくするというのが登記申請業務です。(なお、不動産以外にも会社に関しても登記をします。こちらも司法書士がプロです)

 

 

司法書士の独占業務

権利に関する登記は独占業務であって、仕事として受けることが出来るのは司法書士以外では、弁護士のみです。

 

 

ただ、現実的には弁護士が登記申請をするというケースはほとんどなく、提携している司法書士事務所に依頼します。


 

司法書士以外に権利の登記を申請が認められている専門家はいないと言っても間違いではありません。

 

登記申請業務には強い独占性が認められています。

 

そのため、開業当初に少しあいさつ回りをしたり、開業の挨拶状を出すといったこと以外は、仕事で困ることはまずないというのが、独占業務性からくる司法書士の大きなメリットです。

 

また、合格者が少なく、1年弱程度の修行ですぐに独立開業してしまうため、就職は常に売り手市場の状態です。

 

 

 

登記以外も数多くの業務がある

司法書士は伝統的に登記申請代理が主要な業務ですが、必ずしも登記申請だけをしているというわけではありません。

 

例えば、司法書士業界では、現在、後見・相続・信託などといった高齢者向けの法務サービスに大変力を入れています。

 

また、平成14年から、司法書士試験合格後に、別に研修と試験を受けて合格した人は、認定司法書士という資格が与えられ、簡易裁判所の一定の民事事件においては弁護士と全く同じ活動ができるということになっています。

 

そのため、例えば、家賃滞納者に対して建物明渡請求訴訟をしたり、消費者ローンなどの利用でいわゆる多重債務者となってしまった人について、債務整理をするなど裁判所での事件を主に扱っている司法書士もいます。

 

このように登記に限らず、かなり広い範囲で司法サービスを展開しているのが司法書士です。

 

 

 

司法書士と宅建士資格の関係性

 

次は、試験の出題範囲の関連性について解説しますね。


 

宅建士資格と被るのは「民法」「不動産登記法」

宅建士資格で勉強する科目で司法書士試験でも出題されるのは民法と不動産登記法です。

 

なお、「税その他の分野」で出題となっている不動産登記申請の際の登録免許税の計算問題も出題されます。

 

権利関係で民法、不動産登記法を勉強したことは決して無駄にはなりません。

 

 

ただし難易度はケタちがい

ただ、宅建士資格の民法・不動産登記法と、司法書士試験の民法司法書士試験の不動産登記法は難易度がケタちがいです。

 

仮に、司法書士試験合格者に宅建士試験の民法、不動産登記法を解かせたとしたら、鼻歌を歌いながら満点を取ります。

 

 

筆者も司法書士試験はとても苦労しました...


 

司法書士試験の民法、不動産登記法は、知識レベルとしては司法試験の択一式より細かい知識を平気で問いてきます。

 

司法試験には論文式試験がありますので、全体としては司法試験が難しい試験にはなりますが、こと、択一式試験に関してだけは、司法書士試験の方が司法試験より民法の知識は極めて細かいところまで問うてきます。

 

また、そもそも不動産登記法については、司法書士試験では、択一のみならず、記述式試験まで用意されていて主要科目の扱いを受けていますので、難易度は日本一です。

 

その意味で宅建士で勉強した民法、不動産登記法は「導入」としてのみ役立ちます。

 

 

 

宅建で法律に慣れて多くはステップアップ

司法書士試験合格者で、宅建士の資格を活用しているという人は少ないというのが実際です。

 

宅建と司法書士のダブルライセンス...ではなく、宅建の勉強で法律の勉強に慣れて、次に行政書士をとり、そして司法書士にもチャレンジするというステップアップのために受験していると思います。

 

司法書士に合格した後は、不動産会社から各種登記や決済(銀行などで不動産売買等の手続きを確認する業務)などの仕事を依頼される立場になります。

 

 

司法書士試験は難易度が高い一方で、強い独占性をもっているので高い報酬が期待できますよ


 

 

 

司法書士試験合格と宅建士の資格

 

宅建士と司法書士の資格をダブルで取ったあとのライフプランについて解説します。


 

宅建士としての仕事の経験は大きな人脈になる

では、宅建士としての資格、経験は司法書士にとって何の役にも立たないのかというとそんなこともありません。

 

宅建士時代に作った人脈は登記をはじめとする司法書士の仕事に直結します。

 

例えば、自分が勤めていた会社から不動産登記の申請を依頼されることも出てくるでしょう。

 

また、認定司法書士として建物明渡事件を手がけていれば、俗に言う「不良店子」に退去してもらうための訴訟や交渉を頼まれることもあるかもしれません

 

ちなみに、簡易裁判所の事件=司法書士が取り扱うことができる事件は、マンションなどでは1部屋の価格が280万円までのものとなります。(昭和31年12月12民事甲第412号高等裁判所長官、地方裁判所長あて民事局長通知)

 

このように、宅建士として働いていた時期の人脈は司法書士合格後に役に立ちます。

 

 

最近は「士業の起業」がトレンド

司法書士などの士業は、AIの進展により仕事が激減するのではないかといわれています。

 

一部業務はAIに奪われる可能性があるということで、最近は、「士業による起業」がトレンドとなっています。つまり、士業としての専門知識を生かしつつも、経営者として経済活動に意識を向けるという士業です。

 

そして、司法書士が宅建士資格を活かして、宅建業の登録をして、不動産の売買なども行うというケースも増えています。

 

こういった流れでは、もちろん宅建士の資格は役に立ちます。時代の変化によって宅建士資格が司法書士とコラボで利用されることが流行るのはそう遠くないかもしれません。

 

 

司法書士試験にチャレンジするには覚悟が必要

 

司法書士試験は、5年・10年受験が当たり前の難関試験です


 

司法書士試験は、合格後に研修に行くと「合格まで5年~10年かかった」という人はまったく珍しくありません。筆者が会った最長の合格者は司法書士試験合格まで17年かかったという人もいました。

 

 

司法書士試験は、予備校では短期合格者がパンフレット等で取り上げられ、「3年もあれば受かる!うまくいけば1発合格だって可能」という魅力的なキーフレーズが目に入ってきます。

 

しかし、合格をして研修に行くと、3年以内で合格している人は相当頭の回転が良い人、受験勉強のテクニックを(難関大学受験などの経験から)身につけている人というのが実感です。

 

司法書士試験の受験勉強は基本的に相当時間と根気がかかると覚悟を決めてチャレンジすることが必要でしょう。